お客様へ

「相乗効果で もの凄い出汁になって 驚きました」

御社の素材と出会わなかったら再構築はできなかったんじゃないかな。

聞き手:丸眞株式会社 社長:眞邉光英

株式会社リディファインダイニング
統括総料理長 間宮貴之

もつ吉

〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町31−1

丸眞:
いつもありがとうございます。
本日は、宜しくお願いします。

もつ吉さんの経営理念を読ませて頂いたのですが、その中にあった「新しい価値を創造する」に
私たちと非常に近いものを感じました。
もつ吉様:
再構築って言うんですか。
社名「リディファインダイニング」は
「新たに生み出すのではなくて、今まで先人が培ってきた素晴らしい残っているもの、
誰しもが分かるような、それを、新たに分解し再構築して、うちらしい食として
付加価値をつけてお客様に提供していくこと」という理念がありますね。
丸眞:
素晴らしいですね。非常に近しいなと思ってですね。

私たちも、一度壊して、本物だけど新しいものを見つけたり、
もっと価値のあるものを見いだして、上辺だけではなく、
今の時代に合ったものを作っていきたいと思っています。

そういう面で、肉割烹という業態で私たちの出汁を使っていただいて、
ありがたいなと思っています。

ところで、いわゆる和食じゃなく、肉割烹ってあまりないと思うのですが、
そのために苦労された事や、丸眞の素材や提案だからできたことなどあれば教えていただきたいのですが。
もつ吉様:
以前に、名物であるローストビーフに、
御社の「半生サラダ節」とパルメザンチーズを振りかけるといった
グルタミン酸とイノシン酸の相乗効果についてのご提案をいただきました。

その時、グルタミン酸とイノシン酸プラス和牛で、ものすごい出汁になって驚きました。

フレンチとかだと濃いソースを使って、その血生臭さみたいなのを出すじゃないですか。

丸眞:
隠すというか、被せるというか。
もつ吉様:
それが、鰹節とチーズの相乗効果で血がソースに変わった。逆に。
丸眞:
あー。なるほど。なるほど。

ごまかすのではなくって、その血すら相乗したという事ですね。
もつ吉様:
そうです。出汁に変わってくる。血が出汁に変化した。
この変化の気づきは、非常に良いアイディアを頂いたと感じています。

この事は、弊社のずっと進化し続けている「もつ鍋」にも影響しました。

味噌も進化してるんですけど、出汁が非常に進化し続けている。

8年前に作ったときは、最初は昆布だけだった。
僕がもつ鍋を食べたことがなかった事や
フランス料理出身で和食の経験がない事もあり
「もつ鍋」っていう存在をすごく度外視していた。
丸眞:
なるほど。軽く見てた感じなんですかね。
もつ吉様:
以前から厚削は使っていたんですが、
御社と知り合い、御社の厚削に変えてから、
風味がぐーっと増しました。

今は、真昆布、厚削、宗田節、干ししいたけ、ウルメ鰯ですね。全部使っています。

それを三日間かけるんです。段階を踏んで。

通常の3倍ぐらいする京都の手作りの白味噌に出汁を合わせるんですが、
旨味が全く負けないんです。

和牛の脂を入れているんですけど、一切負けない。
牛コツも入っているし、鶏ガラも入っているんですけど、
何が来るかっていうと、出汁の旨味がバツーン!ってくる。
丸眞:
なるほど。
もつ吉様:
よく出汁だと、味まで付いて欲しくないっていうイメージがあるんですけど、
この「もつ鍋」に関しては、味まで付いてきて欲しいんですよ。
その黄金比っていうんですか、
「牛コツ・鶏ガラ・厚削2種類・真昆布・ウルメ・干し椎茸」これがすべて重なってくると、バーン!
丸眞:
このバランスで。あるポイントがあって。そこにバーン!っと
もつ吉様:
入れる順番に関わってくるんで、三日間どうしてもかかるんです。

火をかけ始めてから丸三昼夜かかって、最後に御社の節でしめる。

そして、一晩寝かせる。なのででき上がりまで4日かかるんですよ。

で、そうなったうえで「もつ」。
「もつ」も良い「もつ」使ってるんですよ。
厳選した小腸を使っていて、普通ボイルして提供するお店が多いんですけど、
うちは生のを使っているんですよ。
丸眞:
ほー。
もつ吉様:
「もつ鍋」の「もつ」に、水洗いをちょっとしたぐらいのものを
あえて出す。
丸眞:
相当フレッシュな
もつ吉様:
そのくらいフレッシュでもあるし、クセもあるんですよね。
脂がモロに出てくるんで。でもそのクセに負けない出汁なんですよ!
丸眞:
そういう事ですね。一回炊いておくと逃げているっていうか、
もったいないんですね。
もつ吉様:
内臓の、よく言うイヤな匂い・臭みっていうのは逆に、旨味に変わる。
これはね、御社の素材と出会わなかったら再構築はできなかったんじゃないかなって感じています。

おそらく「もつ鍋」の概念を超えていると思うんですよ。
丸眞:
お手伝いさせてもらって、とてもうれしいです。
もつ吉様:
そうですね。
それと、基本の出汁は2種類取っているんですが
確実な温度管理を心がけています。
これは御社からアドバイス受けた温度管理です。

全店でやっています。多少はお店によって比率は変わるんですが。
基本的には厚削と真昆布とウルメと干し椎茸ですか。

丸眞:
あれ?ニボシも使っていませんでしたっけ?
もつ吉様:
ニボシですね。ニボシと宗田か。これでやらせてもらっている。あと花かつお。
丸眞:
「煮干UMAMIだし」と丸眞で名前をつけていまして。
鶏節もあるんですけど、「鶏節UMAMIだし」。

今までの使い方とは違う新しい使い方。

特に今おっしゃっていただいたお肉は
脂が入った時に鰹だけだと弱すぎるというのもあって、
ニボシが加わると脂が入ってもすごく上手く重なりあう。

おっしゃっていただいたような事をずっと提案したいなと思っていたので、
正しくこういう肉割烹業態で使っていただくと、
本当に嬉しいですよね。

今までなかったものに、正しく再構築されたんだと思うんです。
もつ吉様:
話は変わって「花かつお」についてですが、
「花かつお」はどうしても粉カスが出るじゃないですか。

これが結構イイ味出してくれる。
丸眞:
あっ、本当ですか!何に使っているか教えて頂けますか?
もつ吉様:
ポテトサラダ。
丸眞:
ゴアゴアしたりするじゃないですか。
もつ吉様:
あの粉カスをポテトサラダに結構な量を入れるんですよ。
でも、鰹だってことはわからないんですよ。
丸眞:
なるほど。なるほど。
もつ吉様:
ダシとして旨味が出るんで、逆にマヨネーズを減らして。
丸眞:
あー。なるほど。ほんと自然な味。
もつ吉様:
自然な味なんですけど、お客様によると「ほっこり」するような。

だから普通のジャガイモから「インカのめざめ」に変えたんですよ。
何でかっていうと、鰹節が勝っちゃうんで、相当パンチがあるものと
上手に引き算ができるっていうんですかね。
足し算・足し算したものから引き算できるんで。
丸眞:
なるほど。調味料が少なくてっていう意味で。
もつ吉様:
そうなんですよ。その分、素材の味がバーン!って旨味として出るので。
丸眞:
なるほど。ありがとうございます。
もつ吉様:
あと牛タンを「昆布じめ」にしてますね。御社の昆布で。
丸眞:
おー、そうなんですね。
もつ吉様:
国産の牛タンを。
丸眞:
味が随分変わってくるんですか?
もつ吉様:
変わりますね。
丸眞:
ああ!そうですねお肉がイノシン酸がメインだし。昆布がグルタミン酸ですから。
間違いない相性ですよね。
もつ吉様:
昆布じめに使ったものを、またちょっと塩あえて「塩昆布」にして添えて出している。
丸眞:
あー。塩昆布。
もつ吉様:
牛タンの昆布じめをすごく薄くスライスして出してるんですけど、
なかなか毎日出せる商品ではない。
やっぱり希少品なんで。和牛の牛タンなんで。
丸眞:
なかなか出てこないんですか。
もつ吉様:
一頭に一個しかないんで。なかなか入ってこないんですけど。
来たときはそういう風にして、常にお出ししている。
丸眞:
旨味の力も含めて、すごく駆使されていらっしゃいます。

丸眞自身もこの「THE UMAMI COMPANY」とすることで、
その旨味の可能性を広げていきたいと思っていて、
まだまだではあるんですが、そういう牛タンの昆布じめとか、
非常に興味あります。
もつ吉様:
要は、小手先で今、調味料があふれているじゃないですか。スパイスもあふれている。
人工的なものも含めてですけど。
簡易的というと失礼ですけど、最後に小手先のアレンジをしたところで、
やっぱり本当の旨味ではないと僕は思っている。
丸眞:
おっしゃる通りですよね。
もつ吉様:
やっぱり、その素材が掛け合って初めて「おいしい」って感じることができるていうのが、
素晴らしいなっていうのが僕の理念でもあるんで、そこは出汁を知りたい。

僕はフランス料理やってたんですが、フォンドヴォーって骨から取り出して、
どうしても1週間ぐらいかかるんです。
御社の節とか出会う前は、出汁と言えば、
インスタントの出汁ってイメージしかなかったんですよ。
和食の経験がないんで。

丸眞:
出汁といえば、インスタントみたいな。
もつ吉様:
昆布だしは使っていたんですよ、鴨の出汁を伸ばしたりする時に。
昆布だと邪魔にならないんで。という使い方をしていました。
なんか単発で取れるじゃないですか。
でも丸眞さんと出会って、凄く深いんだって知りました。
丸眞:
うれしいですね。
もつ吉様:
「深いんだ!」って思い始めて、そこからのめり込みました。
丸眞:
料理もそこから変わっていった感もあるんですか?
もつ吉様:
随分変わりましたね。やっぱり結構な量使うんで。
丸眞:
ありがとうございます。
もつ吉様:
それはありますね。
これからも煮干しのコンソメとか、一回飲ませていただいたんですけど、そういうのは挑戦してみたいな。
それをうちらしくアレンジして出せないかなって研究中。
丸眞:
まさしく再構築ですね。
もつ吉様:
あとはトマト。フレッシュトマトを御社の昆布に漬けたり。
丸眞:
フレッシュトマトを昆布の中に。
もつ吉様:
昆布だしと。すっごいおいしくなるんです。
丸眞:
なるほど。よく「おでん」とかでもありますけど、
「おでん」ではなく昆布の出汁に漬ける。
もつ吉様:
そう。そう。昆布だしに少量の砂糖を入れるんですけど、
それに湯向きしたトマトを三日ぐらい漬けておくと、糖度がめちゃくちゃ上がるイメージです。
丸眞:
甘さが。
もつ吉様:
甘さが。びっくりするぐらい。びっくりしますよ。
丸眞:
食べに来ます!
一般的にはグルタミン酸とイノシン酸の相乗効果って言われたりしますけど、
どっちかというとトマトはグルタミン酸が多いと言われています。

一度ですね菊乃井の村田さんが、出汁対決というので
鶏節とドライトマトを相乗させようってやったんですが、
そのグルタミン酸を活かそうという形で
使われているのは聞いたりするんですけど。

たぶん、昆布の中に入ると、
昆布自体も甘みがありますもんね。奥行にね。
多分それが吸われて美味しくなっていくんでしょうね。
もつ吉様:
たまたまやったんですけどね。そういう新しい発見って、
ちょっとした発見から膨らんでくるじゃないですか。
丸眞:
そうですね。
もつ吉様:
常にやってこうかなって。
丸眞:
すばらしいですね。ありがとうございます。
丸眞:
丸眞に対して今後望むこととか、あったりしますか?
もつ吉様:
営業さんから、化学に戻った分析とか、
マニアックなご提案を頂いているんですが、すごく興味がある。
そういった化学反応的なことろから出汁の調理法を
アドバイス頂けたら面白いかなってところですかね。
丸眞:
ありがとうございます。
丸眞:
この間、イタリアに行ってきたんですけど、亡くなったんですが、
イタリア料理の巨匠マルケージさんにレシピを監修してもらったんです。

そこで「旨味の時代」っていうサインを頂いて。
イタリアでもそういう動きがあったり、
旨味は和食だけでなくて世界的な流れになりつつある。

和食の中でも、こういう風に間宮さんみたいな形でやって頂けることは、
旨味の広がりや可能性を感じられてすごくワクワクします。
もつ吉様:
マルケージさんって、キャビアのパスタですよね。
丸眞:
そうですね。冷製のやつですよね。
冷製って珍しいらしいですね。
もつ吉様:
ちなみに、パスタ茹でるじゃないですか。
茹でるときに昆布を10cmぐらいポンッって入れてあげると
ものすごい歯ごたえになるんですよ。
丸眞:
パスタがですか?
もつ吉様:
ゆで汁があるじゃないですか。昆布をちょっと、出汁がらでもいいんですけど、
ちょっとポンッって入れて、少しこう沸かすじゃないですか。
パスタは乾麺なんですけど、茹でるとプリッ!プッリ!になるんですよ。
丸眞:
えー。なんでなんですかね?
もつ吉様:
化学的に証明したいんですけど。
丸眞:
調べます。
丸眞:
共に、素材の使い方も含めて旨味の可能性を広げていければと思っています。
もつ吉様:
いろいろな使い方。僕しかできないっていうか、和食の経験がないからこそ
できることがあるんじゃないかなって思いながら。今、アタックしています。
丸眞:
固定概念に縛られないというか。
もつ吉様:
そうですね。
丸眞:
ぜひ、宜しくお願いします!本日は、お話しさせて頂きありがとうございました。
もつ吉様:
ありがとうございました。
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