2018/11/07 | 鰹節

「鰹節」とは何か?

《鰹節の種類》《鰹節ができるまで》など 基本を徹底解説!

こんにちは。丸眞の代表の眞邊です。
突然ですが、世界一硬い食材ってご存知ですか?
その食材は、鉄よりも硬いそうです

正解は、「鰹節」です。
モース硬度(硬度の単位)でいうと、ダイヤモンドが最高値の「10,0」に対して、鰹節は「7,0〜8,0」程度あるといわれています。
種類にもよりますが、一般的に鉄は「4,0〜5,0」、プラチナなども鉄と同程度と考えられているので、「鰹節」は鉄やプラチナよりも硬いということになります。
そんな食材、鰹節以外になかなかありません。この世界一の硬さは、ギネス認定もされているそうです。それはそのはず、鰹節を削るのはカンナ(削り器)ですから。

また、古墳時代から「堅魚(カタウオ)」と呼ばれていたことを考えれば、その硬さは古くから証明されていたということがわかりますね。

しなやかに海を泳いでいた生身の一匹の魚がダイヤモンドのように硬い食材になるなんて、一体どういうことなのでしょうか。それも、ただの世界一の硬い食材なのではなく、旨味をギュッと閉じ込めた上での結果の硬さ。
堅い、うまい!これはもう食材界のダイヤモンドだと思っています。

どんな風につくられているかちょっと知りたくなりますよね? そして、作られ方次第で、その旨味や風味はまさに宝石のようにさまざまに変化するのです。

ということで、今回はそんな「鰹節」の種類や製造方法などをご紹介していきたいと思います。

参考
▼ 鉄 4~5
http://www.asahi-net.or.jp/~jh3m-fjym/katasa/katasa.html


目次

1、 そもそも鰹節って何だ?
1-1 鰹節の種類 —節の違い—
2-2 鰹節の種類 —削り方—

2、 鰹節ができるまで
3、 まとめ


1、 そもそも、鰹節って何だ?

「鰹節」とは何か?
—なんて、普通は考えませんよね。
花かつお。削り節。枯れ節。荒節。おかか。薄削り。姿・原料。
鰹を原魚とする節でも、いろいろとあります。

これらは、もちろん全部鰹節。その違いは、作り方や削り方なのです。
カビ付けをするかしないかなど製法の違いや、その後の削り方の違いでさまざまなネーミングがあります。
ふだん手にする鰹節でも、さまざまな呼ばれ方をしていて、少し複雑ですよね。今回のブログを読んでいただいて、この辺のことがクリアになればと思っています。

鰹節にまつわるちょっとしたネーミングの微差が、鰹節の味や風味の大きな差に。
これを紐解くと、鰹節の細やかな世界が見えてきます。

1−1 鰹節の種類 —節の違い—

「鰹節」は、大きくわけて2種類あります。
荒節(あらぶし)と、枯れ節(かれぶし)。
簡単に説明すると、鰹節は解体して内臓を処理し、煮て、燻して、干して、カビ付けして熟成して出来上がります(詳しいつくり方は、後述します)。

ざっくりとした説明ですが、簡単にお伝えするとこの製造工程の中で、燻したところまでのものを「荒節」、カビ付けして熟成まで行ったものを「枯れ節」といいます。さらに、「枯れ節」の中でも、天日干しとカビ付けを複数回繰り返したものを「本枯れ節」といいます。

「本枯れ節」の定義は、メーカーや問屋によってさまざまで統一された定義はないのが現状です。例えば3回以上カビつけしたものを「本枯れ節」と呼ぶところもあれば、カビをつけるというよりも天日干しに重点を置き、それを繰り返したものを「本枯れ節」と呼ぶところもあります。
ただ、実際に4〜5回もカビ付けと天日干しを繰り返すと割れてしまうので、実際にはなかなかそこまではできないのではないかと思います。

現代の節は荒節の状態でもかなり火が入って元々の水分量が少ないので、「荒節」ができるまでには1ヵ月くらい、「枯れ節」ができるまでには約半年、中には熟成に2〜3年費やすものもあります。
この熟成の程度で見た目はもちろんですが、風味がまったく変わってきます。

「荒節」は、鰹の風味を残したキリッとインパクトの強い味わい。その香りや味は、「荒節」というネーミングがよく似合います。反対に、「枯れ節」は熟成させているので角が取れ、魚臭さが消えて上品でまろやかに。
一方で、カビ付けにより、味が豊かで深くなっていきます。口に含むと、じんわり体に染み渡っていくような優しさと風味の深さが感じられます。さらに熟成を重ねた「本枯れ節」は、旨味や香り、味わいの深さがより一層増していくという感じです。

熟成するほど旨味が増す理由は、鰹の旨味成分「イノシン酸」が増えるから。「荒節」よりも、「枯れ節」に旨味成分が多く含まれ、「枯れ節」よりも「本枯れ節」の方に旨味成分が多く含まれているということですね。

でも、だからといって「本枯れ節」が一番優れているというわけではありません。その手間暇からお値段は張りますし、味わいの豊かさから高級料亭で使われることも多いですが、「荒節」には「荒節」にしかない味わい、「枯れ節」には「枯れ節」にしかない味わいがあります。好みもあるでしょうし、当然、求める味づくりによって適してくる料理も変わってきます。
そのお店の対象とする方々の好き好きや、料理によって味の設計をしていくと良いと思います。
では、あらためて、以下に「荒節」と「枯れ節」の違いをまとめてみましょう。

  荒節 枯れ節
作り方 燻すまで カビ付けして熟成
節の見た目 黒く焦げたような色(黒節ともいう) 薄茶色の粉に覆われたような感じ
できるまでの日数 1カ月くらい 3〜6カ月くらい
出汁にとったときの色や風味 ■ 色は、澄んだ琥珀色。

■ 香りは強く、魚の風味が効いてパンチがある。強く短くインパクトを残す感じ。

 

■ 色は、荒節より薄い黄色でとても澄んでいて透明に近い。

■ 魚臭くなく、スッキリとして優しい旨味。穏やかにじわっと染み渡る感じ。

一方で、渋みや酸味も顔を出してくることもある。

 

適した料理 ■ 煮物、味噌汁などにおすすめ。味噌など一緒に使う調味料に負けない味わいに。 ■ お吸い物、茶碗蒸しなど特に出汁の味を生かしたい料理におすすめ

1−2 鰹節の種類 —削り方—

鰹節には、大きくわけて「荒節」と「枯れ節」の2種類があることをお伝えしましたね。これらの2つの鰹節をどのように削るかでまた呼び名がいろいろあります。
そして、この削り方ひとつで、また出汁の味が変わってきたり、使う用途が変わってきたりします。
削り方やそのネーミングについてはメーカーや問屋それぞれで異なり、細かい違いがあります。ここでは、丸眞の場合でご説明しますね。

厚く削れば、濃厚で強めの出汁が取れ、薄く削ればマイルドになっていきます。ただ、出汁を取る時間は、厚めなほど時間がかかり、薄めなほど早い特徴があります。この特徴は、どのメーカーや問屋でも大体同じ、と考えていただいて大丈夫です。

  削り方 味の特徴
厚削り

 

その名の通り、厚く削ったもの。0.7~1.2mmくらい。 濃厚で比較的強い出汁が取れる。

ラーメンやうどん、煮物など味付けにインパクトのある料理に適している。

中厚削り 厚削りよりも少し薄めに削ったもの。 厚削り同様に、ラーメンやうどんなどのインパクトのある料理向け。出汁とりの時間短縮や味調整に。
薄削り ひらひらとした状態まで薄く削ったもの。いわゆる、「おかか」で想起される状態のもの。 短時間で雑味を出さずに、旨味や香りを取りたいときに。ダシ取り用の薄削りは、トッピング用よりもやや厚め。
粉砕

(細かい粉砕/粗い粉砕)

節をそのまま砕いたもの。粉の状態。 時間や火加減を調整することにより、厚削りの味の様に濃厚な出汁を短時間で再現できる。また出汁の濃度はしっかり出しているのに、軽い感じの出汁を抽出することも可能。

 

 

削り方、よってもこんなに違いが出てくるんですね。新しいメニューでどんな味をつくりたいかを考えるとき、鰹節の「削り方」にも注目してみください。また丸眞では、そのお店のご要望を伺い、どの様な削り方のものが良いか提案させて頂きます。

2、 鰹節ができるまで

鰹節はどうやってつくられるでしょうか?世界一の硬さを持つ、最強旨味食材「鰹節」のできるまでを追ってみましょう。
それぞれの鰹節工場での細かいつくられ方の違いはありますが、大まかな流れは基本的には同じです。

1. 鰹の選別 まずは、鰹を選ぶところから。大きさ、鮮度や、脂肪のつき方をみて、鰹節に最適なものを選びます。

 

例えば生食用では、脂身が多い方がよい鰹をされますが、鰹節にするには脂身の少ない方が良質となります。

 

2. 生切り 「生切り」とは鰹の頭や内臓、余分な肉などを取り除いて、いわゆる「鰹節」の形にすること。

 

内臓など余分なパーツを取り除き、水洗いしたあと、3枚におろします。それを、血合い部分を境に、腹側と背側に切り分けることで、1尾から4本の節がつくられることになります。

3、籠立て 生切りされた節を、煮るために煮籠(にかご)に並べていきます。

ねじれていたり、曲がって並べられたりすると、その状態で煮固められてしまい形のいい鰹節にはなりません。身の最終チェックをしながら、丁寧に1本1本並べていきます。

 

4、煮熱 煮籠を重ね、ウインチ(巻上げ機)で釣り上げて釜の中へ。

煮釜は100℃に達しないよう、最高温度を98℃に保ち節を煮ていきます。100℃にしてしまうと、釜に大きな泡が立って節の荷崩れが起きてしまうから。

籠立て同様に、煮る工程でも神経を使いながらの丁寧な作業が続きます。この釜で大体1時間半ほど煮ていきます。

 

煮ることで、節中の水分を抜いてタンパク質がギュッと凝縮します。それによってよく肉がしまり、魚臭さなど雑味の抜けた上品な味になります。

5、放冷 煮釜から出した節は、風通しのよいところにおき、1時間ほど風にさらします。ちなみにこの状態のものが、生感の残った「なまり節(生節)」となります。
6、骨抜き 水を張ったタライの中で、骨をはじめ、皮、鱗、皮下脂肪、汚れなどを取り除く作業をしていきます。通称「骨抜き」といいます。

この工程では皮を全部剥ぎ取らず、一部を残すようにするのですが、この後の工程「焙感(ばいかん)」で身崩れが起こるのを防いでくれるからです。さらに、その残った皮のシワ具合で、節の乾き具合をチェックします。

7、焙乾(ばいかん) 「骨抜き」を終えた後の節は、約68%の水分を残した状態ですが、これを燻すことで蒸発させ、腐りにくくするのが「焙乾(ばいかん)」という作業です。

焙乾では、セイロの中に並べられ焙煎炉に入れられ、下からたきぎで燃やします。たきぎには、ナラやクヌギなどの硬い木やおかくずを使います。

 

焙乾は、何度も繰り返し行われるのですが、一番目に行われるものを「一番火」、二番目に行われるものを「二番火」、三番目を「三番火」などと呼ばれ、その回数に応じて名前がつきます。

大体、10〜15番火くらいまで焙乾を繰り返します。

 

一番火では特に、表面の水分を除き、雑菌を殺すのが目的になります。一回の焙乾で約1時間、煙が均一に行き渡るように途中でセイロの上下を入れ替えながら、85〜90℃の炉の中で燻されます。

 

8、整形 一番火のあと、その翌日に行われる作業が「整形」といいます。

焙乾の後、節は身が欠けてしまったり、傷がついてしまったりすることがあるので、それを整えていきます。

 

身崩れを起こした節をそのまま次の工程に進めると、欠損部分からさらに身割れが起きたりするためです。この「整形」の工程では、見た目を整えるだけではなく上質な節をつくる上でも大切な作業になります。

 

作業としては、生切りのときに切り落とした生肉を節と一緒に煮熱させておき、その「煮熱肉」と切り落としたままの「生肉」を混ぜ合わせてペースト状にしたものを節の欠けた部分に埋め込んでいきます。

9、間歇焙乾

(かんけつばいかん)

整形を終えた節は、セイロに並べて再度焙乾します。「一番火」以降のこの焙乾を「間歇焙乾」といいます。

 

10〜15番火まで焙乾を繰り返すのですが、焙乾の度に休ませながら行います。休みなく焙乾を続けてしまうと、表面だけが硬くなり内側に水分が閉じ込められてしまうからです。

 

最後の焙乾を終えたあと、節は2〜3日天日に干されます。出来上がった節は黒くザラザラしていて、ここまでの工程のものが「荒節」となります。

 

焙乾を終えた節の水分は28%程度まで減少しています。

10、削り 焙乾の熱によって発生した凹凸や曲がりを整え、さらにカビ付けをしやすいように表面のタール分や滲み出た脂肪分を削ります。

ここで真っ黒だった節は、赤褐色のつるんとした綺麗な節になります。この状態のものを通称「裸節」といいます。

11、カビ付け・日乾 裸節にカビを付ける作業に入ります。

 

発酵・熟成させるためにカビを付けるのですが、カビが成長する過程で節の内部から水分を均等に吸収して乾燥させてくれるという意味合いもあります。

また、カビは脂肪も分解してくれるので、これによって脂肪の少ない澄んだ出汁が取れるようにもなるのです。

 

鰹節工場には、カビ(鰹節用に安全性が証明された優良カビ)が発生しやすいように温度と湿度を一定に保たれた「カビ室」があり、そこに木箱に詰めた裸節を入れます。

すると、夏場で6~10日ほどで最初のカビが付きます(一番カビ)。

一番カビのついた節をむしろの上に並べて日干し、その後、ブラシを使って1本1本カビを払い落とします。

 

このカビ付けと日乾を繰り返し、ようやく鰹節(「本枯れ節」)が完成します。水分率は、12〜15%まで落ちています。

▼ 「鰹節」のできるまで(日本鰹節協会)
http://www.katsuobushi.or.jp/02/02-02.html

▼ にんべん
https://www.ninben.co.jp/katsuo/making/

1〜11までの細かな工程には、およそ120日もの月日が掛かります。
鰹が本枯れ節になる頃には、鮮魚のころから6分の1程度にまで凝縮されています。

3、 まとめ

今回は、鰹節の種類やつくり方についてご紹介してきました。
鰹節ができるまでには、さまざまな工程を経て120日もの日数がかかります。
籠に並べるときにはミリ単位で丁寧に並べたり、煮るときの温度を1℃単位で細やかに設定したり。
燻して休ませる作業を15回も繰り返したり、焙乾作業で欠けた部分は同じ鰹の肉で丁寧に補修・整形されたり。
まさに、人間国宝による工芸品をつくるような精緻な職人芸によって鰹節はようやく誕生するのです。

素晴らしい人間の人智と技術、そして自然の力によって完成された芸術品のような一本の節。その結果が、拍子木のような世界一硬い食材となり、無形文化財となった「和食」を支える極上の旨味をつくり出しているのです。

出汁の原料として当たり前のようにそばにある「鰹節」たちですが、実は世界から認められたナンバーワンでオンリーワンの存在なのです。

改めて、鰹節に感謝です。

★主要参考資料&URL

■ 全国削節工業協会
http://www.kezuribushi.or.jp/arabushi.html

■日本鰹節協会
http://www.katsuobushi.or.jp/02/index.html

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